「未来の麻雀」ブログ

同人サークル「フライング東上」の麻雀漫画復刊レーベル「未来の麻雀」のブログです

好きな麻雀漫画20選

 

本エントリは、タイトル通り好きな麻雀漫画20本を紹介するというものです。
あんま更新しないブログですし、初めて来た方のためにこれ書いてる人間について書いておきますと、「フライング東上」というサークルの主宰をしてて、同人誌で『麻雀漫画研究』というシリーズを出しており、いろんな麻雀漫画関係者へのインタビューや、潰れた雑誌(信じられないと思いますが、麻雀漫画雑誌というのは最盛期(85年)には同時に15誌以上が出てたくらい種類があります。3号で潰れたのとかも多いけど……)の掲載作紹介などを行っています。また、「未来の麻雀」という同人レーベルをやってまして(このブログはそれ用のブログ)、単行本が出なかった麻雀漫画について、著者に了解をとって同人単行本化(印税ももちろん払ってます)したりもしてます。サークルの本については

vhysd.booth.pm

をご参照くだせえ。
あと、最近更新サボリ気味なんですが「麻雀漫画wiki」というのも作っていたりもします。

www47.atwiki.jp

で、なんでこんなエントリを立てたかという話です。
ちょいと前にMリーグが発表されたとき、twitterの麻雀漫画好きの一部の間で『メジャー』という麻雀漫画のことを思い出すという話が出たんですが、俺が「『メジャー』、好きな麻雀漫画ベスト10に入れるくらい好きだな」ということをツイートしたところ、「他に10選に入れるのどの辺の作品ですか?」ということ聞かれまして。
思えば、「麻雀漫画10本」として選ぶような作品、ちょっと前までは紹介しても古本屋にしげく通う以外に読みようがないのが多かったんですが、近年に入ってかなりkindle化されたほか、スキマやマンガZEROなどの無料漫画サイト(ちゃんと許諾取ってるやつ。麻雀漫画に限らず、漫画ゴラク掲載作などオヤジ向け劇画の類は、旧作を広告付き無料で公開してるのが最近多いです)でも結構読めるようになっています。kindleにしてもunlimited入りしてるのが多いですしね。こりゃ一度まとめてきちんと紹介するかと思いましたーん。夏コミの宣伝にもなるしな。

選んだ基準として、一人の(原)作者につき一作としているのと、完結作品に絞っています。棺を蓋いて事定まるという言葉もありますし。また、紹介の順番はランキングというわけではない(上5作くらいはまあ動かない最上位ですが)です。
そんな感じです。以下目次。

麻雀蜃気楼(来賀友志+甲良幹二郎

別冊近代麻雀91~94年連載 (スキマ / kindle) 

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あらすじ

建設会社に勤める若手サラリーマン・野中雄二はある日、現場の知り合いに、行きつけの雀荘・ともえへ連れて行かれた。仕事でうまくいかないことが続いて荒れ始めた雄二は、チンピラヤクザや学歴のない寿司屋といった「自分より下」の人間ばかりがいるともえに醜い居心地の良さを感じ、「こんな奴らには負けたくない」と点棒のごまかしまで行ってしまう始末。たが、ともえのマスター・柴田に諭されたことで雄二は自分の人生を見つめ直す。柴田を人生の師とし、仕事でも麻雀でも成長していく雄二だったが、そうして会社で頭角を現した結果、大きなプロジェクトの一貫としてともえの入っているビルの地上げを行わなければならなくなり――。

 

 例えば、もし誰かに「お前が研究してる麻雀漫画というもの、試しに1作品だけ最後まで読んでみてやる。俺に何を読ませるか選べ」と言われたら、俺は迷わず本作を選びます。「人生をどう生きるか」を描いた、ずっしりと重く、麻雀漫画の中で他に類を見ない傑作。めちゃくちゃに絵が濃い(甲良はさいとうプロ出身。ゴルゴが麻雀を打っているような感じを想像してください)のが最初とっつきにくく感じるかも知れませんが、この絵だから出せる重さというのはあります。最終巻である3巻、ひたすら痺れますぜ。

原作の来賀友志は、本編・外伝合わせたシリーズの通巻が100を超える大河麻雀漫画『天牌』シリーズが一番有名ですが、それ以外も傑作揃い。日本一の麻雀漫画原作者と呼んで間違いないでしょう。初期の代表作にして狂気の傑作『あぶれもん』(マンガZERO / kindle)、本格闘牌と少年漫画的な雰囲気を併せ持った『てっぺん』(マンガZERO / kindle)、黎明期竹書房へのオマージュ作品『ザ・ライブ』(kindle)、「地球人類は1/4に数を減らす必要があり、生き残るべき人間とそうでない人間を見分けるのにベストなのは麻雀」と主張する男が主人公だし、牌の中には反物質が封じられており、それを引き出して対消滅が起きるシーンがある(恐ろしいことに、この概要に誇張は一切ないです)『ナイトストーン』(電書がないのは損失すぎる)、リアルな劇画調の犬が麻雀を打つシリアス作品として一部の人間に知られていた『無法者』(長く単行本化されていない幻の作品でしたが、弊サークルで本にしました。試し読みはこちら。なお、今は在庫切れです)など、どれも麻雀漫画好きなら必読。麻雀オンリーではない総合ギャンブルもので、宮下あきらと組んだ『世紀末博狼伝サガ』(kindle)もいいんですよ。福本伸行以降、ギャンブル=頭脳バトル・騙し合いみたいな趣が強いきらいがあり、もちろんそういう作品はそれで面白いんですが、「完璧な読みが、どうしようもない何か(運とか勘とか)に負ける」というのもギャンブルの面白さの一つではあるわけで、来賀作品はそのへんの塩梅が絶妙だと思います。というか頭脳100の勝負がやりたければ麻雀よりもっといいゲームがあるし……(福本が、鷲巣麻雀みたいな変則ルールや、限定ジャンケンのようなオリジナルゲームといった路線に向かったのはむべなるかなだ)。

咲-Saki- 阿知賀編小林立+五十嵐あぐり

月刊少年ガンガン11~13年連載(Amazon

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あらすじ

時は21世紀、世界の麻雀競技人口は数億人を越え、高校でも大規模な全国大会が毎年開催、高校生麻雀部員たちが覇を競っている時代。奈良は吉野の阿知賀女子高校に通う高鴨穏乃は、小学生時代に地元の麻雀教室で一緒に麻雀を楽しんでいた仲間だった原村和とインターハイの舞台で再会することを目指し、仲間たちと大会に挑む。

 

ここ10年の麻雀漫画シーンで最も重要(出来と世に与えた影響の両面で)な作品は『咲-Saki-』シリーズであることは論を俟たないというのが俺の持論ですが、本編はまだ完結してませんし、全6巻という長すぎない中でかっちりと決まっているこっちの方を。なお、上のあらすじに登場する原村さんというのは本編の方の副主人公でして、本作は、本編の決勝でぶつかるライバル校のストーリーというわけです。
小林立という作家、キャラ造形が異常にうまいと思うんですが、それが1試合につき20人(1チーム5人×4チーム)が参加する麻雀大会という舞台設定とめちゃくちゃ噛み合っており、4人全員の思惑が交錯するかなり立体的で質の高い闘牌(「能力」がわかりやすくド派手なせいで過小評価されがちですが、闘牌の質というのはイコール現実性というわけでもないですかんな)にもつながってる感がありますね。
ちなみに、アニメ版・実写版ともに出来が良く、メディアミックスにほんと恵まれています。漫画の実写化の中で美少女ものってのは割と鬼門度が高めのジャンルでしたからなー……。 

バード 砂漠の勝負師(青山広美

近代麻雀00年連載(kindle

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あらすじ

ラスベガスで活躍する、「神の指」の異名を取る天才マジシャン、バードの元へ、代打ちの依頼が届いた。
相手となるのは、全自動麻雀卓で天和を積み込むという前代未聞のイカサマ技を操る伝説の男――通称「蛇」。
稀代のマジシャンと不世出の裏プロによる、空前絶後の勝負が始まろうとしていた――。


イカサマ麻雀漫画の最高傑作。山根和俊作画のリメイク版もあるんですがオリジナルの方を推します。
麻雀漫画をあまり読んでない人にとっては「麻雀漫画=イカサマ」のイメージがあるんじゃないかと思うんですが(『哲也』とか『ムダヅモ無き改革』とか、ヒット作にサマありは多いですし)、実際のところ、80年代以降の麻雀漫画においてイカサマものは作品数でいえば傍流です。なんでそうなったというの、サマは意外と話が制限される(地に足ついた作品の中ではルール違反の卑怯者だし、派手な作品の中ではサマ使わないと役満あがれないとか小物すぎ(ドラゴンボール世界における銃使いみたいなもんで)だし)とかいろいろな理由があるわけですが、全自動麻雀卓の普及は中でも大きいファクターでしょう。ガンパイや通し、エレベーターや拾いなど、全自動卓でも使えるサマはもちろんありますが、最大の華である「積み込み」は全自動卓だとほぼ封じられてしまいますかんね。
だが本作は、あらすじの通り、不可能なはずの「全自動卓での積み込み」をテーマにしてるんですね。狂気の雀士・蛇(このキャラクター造形がまたいいんですよ)がいかなるトリックでこの不可能犯罪を実行しているのか、バードはいかにしてそれを上回るのか。本作は上質な麻雀漫画であると同時に上質なミステリでもあるのです(作者の青山は、『九蓮宝燈殺人事件』(マンガZERO / kindle)というそのものずばりなミステリ麻雀漫画もものしています)。
青山作品では、文明が崩壊した未来の東京を舞台としたSF麻雀漫画の傑作『トーキョーゲーム』(マンガZERO / kindle)も非常におすすめ。  

ミリオンシャンテンさだめだ!!(片山まさゆき

近代麻雀オリジナル97~00年・近代麻雀00年連載(マンガZERO / kindle

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あらすじ
配牌が常に凄まじく悪いというツキのなさを持つ宿命田草太が所属する転倒大学麻雀研究会は、学生麻雀選手権に参加してもブッチギリの最下位が定位置という超弱小チーム。しかし、ボディーも配牌もビッグな新入生・めろん畑桃実が入部したことをきっかけに、宿命田と転倒大学麻雀研究会の快進撃が始ま……る?

 

 麻雀漫画の王、片山まさゆき。片山作品といえば、つい最近実写映画化も発表された『ノーマーク爆牌党』(kindle)を麻雀漫画の最高傑作に上げるという人もかなり多いでしょうし、それは俺も異論があるものでもないんですが、それはそれとして一番好きなのは本作。
そも、90年代の片チン、他の作品も滅法面白いんですよ。麻雀漫画なら、「プロ雀士とはどうあるべきか」に正面から挑んだ『理想雀士ドトッパー』(kindle)、父の仇を追っての終盤シリアス展開が非常に面白い『まんちょくスナイパーとどめ』(kindle)、公募の素人がプロ雀士に挑むという異色の実録作品『夢リーチファイター素人伝説』(kindle)といったあたりどれもすばらしいですし、麻雀以外でも三国志ギャグの『SWEET三国志』のほか、雑誌休刊で未完に終わったガチホラー「プーカが華火をうちあげる」、ヤクザと原発を描いた異色の読切「プライスレス命生」なんていう単行本未収録群だって面白い。
そういう風にいろいろある中で本作が特に好きなのは、麻雀を一番楽しそうにやってるからです。学生麻雀というカネや名誉とあまり関係ないところで、全力で麻雀楽しんでる。『咲-Saki-』好きなのと近しい所がありますね。芥川の「濁流」、熊殺の「度胸」など、ライバルたちの打法(本作、片山作品の中で最も能力麻雀度が高い)も華やかに個性的でよいです。
あと本作、ラスボスがすごくて、なんと「麻雀であまりにも多くの人を不幸にしてきたために麻雀から嫌われており、超安手しか入らない。リーチをかけても裏ドラは絶対乗らない」という超マイナスの特殊能力持ち。だがあまりにも麻雀の才能があるので、そんな状況でもわずかにあるアガリへの道を絶対に逃さないし、絶対に勝つ、という……。能力ものの麻雀漫画の中で最高の敵キャラだと思います。

麻雀放浪記 凌ぎの哲(阿佐田哲也+原恵一郎) 

近代麻雀01~06年連載(マンガZERO / kindle

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あらすじ

かつてその名を轟かせたバイニン「坊や哲」もそれなりに歳を重ね、麻雀の打ちすぎで肘が上がらなくなってイカサマに支障が出たり、ヒロポン中毒になってしまったりと、色々と大変な日々。それでも生きていくために麻雀で凌いでいかねばならず……。

 

言わずと知れた小説『麻雀放浪記』。コミカライズは北野英明版(未完で終了)、井上孝重版(これは傑作)がある他、現在は嶺岸信明版が連載中です。いちばん有名な『哲也』は、「原案」くらいの感じで、実はコミカライズとは言い難い。
で、これらの作品と本作の違いは、他のコミカライズが原作の第1部「青春編」をもとにしてる(和田誠の映画版もこれ)のに対し、本作は第2~4部「風雲編」「激闘編」「番外編」を再構成したエピソードのコミカライズであること。少年のビルドゥングスロマンだった「青春編」とはだいぶ違う味わいとなっています。特に面白いのは中盤以降、原作からモチーフを借りてのほぼオリジナルストーリーである「権々会編」「バクチ列車編」。派手なバイオレンス描写やキャラのリアクション芸といった演出がキレッキレで、この辺は後の作品『ワシズ』(鷲巣様を主人公にした『アカギ』スピンオフ)にも受け継がれました。
なお、本作唯一の欠点は「権々会編」「バクチ列車編」が権々会編の途中までしか電子書籍にはなっておらず、コンビニコミック版(それぞれ『バクチ麻雀地獄寺!』『麻雀バクチ列車!』の題で刊行)でしか読めないということです……。最終章である「雀荘争奪編」に至っては一切単行本になってないですし……。頼む電書化してくれ。

メジャー すべてを麻雀に捧げた天才!!(南波捲+伊賀和洋)

近代麻雀ゴールド94~95年連載

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あらすじ
画家として生きていくという夢破れ、適当に授業をこなす傍ら生徒との賭け麻雀に明け暮れる不良美術教師・高浜は、ある日、本物の麻雀の実力を持った天才生徒・若園貫と出会う。
麻雀で生きていきたいと考えていた若園だったが、しかし、既存の麻雀プロのあり方は「麻雀で生きていく」とは言いがたい。真に麻雀で生きていくと言うならば、まず、麻雀という競技そのものが、万人から認められる「メジャー」な存在にならなければならない。
麻雀に己を賭けようとするもう一人の天才・花巻、既存団体で冷や飯を食わされ燻る麻雀プロ・小田原、新たな競技としての麻雀に可能性を見出す商売人・新井……。様々な人間を巻き込んで、若園と高浜は、「麻雀で生きていく」という夢のために奔走する。
はたして、麻雀は「メジャー」となることが出来るのか?

 

高い理想と才能を持った若者に周囲の大人たちが感化され変わってゆき、障害を乗り越え、大きな夢に向かって進んでいくという、読んでいて非常に清々しい快作。規則正しい生活をし、日々練習・研究を怠らないことが強さを下支えしているという主人公の描き方は麻雀漫画ではかなり珍しいところ。こうとだけ書くとなんかひ弱な頭でっかちキャラっぽいですが、伊賀和洋の絵がスパークしまくっているために「真面目で異常に麻雀が強い狂人」というオーラが感じられ、「こいつなら麻雀を『メジャー』にできそうだ」という納得がすごいキャラとなってます。下の画像は、「4時50分に規則正しく目覚めるが、その後に勝負への緊張で痙攣を起こすというのが毎朝の日課となっている主人公」です。

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竹書房から単行本が出てますが、これは1巻で打ち止め。小池書院から出たコンビニコミック版全2巻が唯一全部読む方法……だけど絶版なんすよなあ。電子書籍になってくれ!

麻雀激闘録3/4(ほんまりう

近代麻雀オリジナル84~87年連載 (スキマ / Amazon

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あらすじ

明都大学応援団に所属する堀場要は、下級生いびりばかりの団に嫌気がさし、退部を決意する。退部の条件として、法外なレートでの上級生との麻雀勝負に臨む羽目になった堀場は、雀ゴロ・魚地の手ほどきを受け、この勝負を切り抜ける。堀場はそのまま、麻雀打ちとしての道を歩むことに――。

 

80年代麻雀漫画を代表する傑作。タイトルの「3/4」は、「何事においても、あと少しでモノになる「3/4」の地点で満足してしまえば一流にはなれない」という戒めの言葉です。
ほんまりうというの不思議な漫画家でして、作品の8割くらいは原作付きのものであり、ハードボイルドや野球から水商売ものまで広く確実にこなす(だいたいどれも一定以上面白いです)いかにも職人劇画家的なタイプに見えて、比率は少ないオリジナル作品の方が出来が良い。本作もご多分に漏れません。また、「闘牌原作」をきちんとシステムとして確立させた(本作の闘牌は麻雀プロの「バビィ」こと馬場裕一が担当。当初はほんまが個人的に闘牌協力料を払っていたが、それを聞いた編集者が「そういうのはこっちが払うべきだ」と編集部が支払うように変えたという)という意味でも麻雀漫画史的に重要な作品です。

ちなみに、本作の約20年後を舞台に、ある事件から生きる気力を失っていた堀場の再生を描いた続編「3/4それから…」があります。長く単行本化されていなかった知られざる作品なんですが、弊サークルで単行本化しました。まだ在庫ありますんで是非に。また、麻雀漫画研究にはほんまへのインタビュー号もあります。

プラム!(おおつぼマキ

近代麻雀オリジナル98~99年連載

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あらすじ

特にやりたいこともなく、雀荘にダラダラと入り浸ったりの日々を送る浪人生・三島は、骨折で入院した病院で、難病でほぼ全身麻痺だが、凄まじい記憶力と数学センスとを持ち、麻雀ゲームで圧倒的な強さを見せる少女・小梅と出会った。
リアル麻雀が打ちたいという彼女の望みで雀荘へと出かけるようになった二人は、小梅の頭脳と三島の運の良さが組み合わさったことにより連戦連勝。
そんな日々の中で、小梅は、障害者である自分への悪意に怯えていた日々を脱して少しづつ世界と関われるようになり、その苦しみに触れた三島は、何も考えずに生きてきた自分を恥じ、介護の道を志すようになる。
だが、小梅の罹っている病気は、彼女の年まで生きているのが奇跡と言える難病であり、その寿命はもはや尽きようとしていた……。

 

難病ものでお涙頂戴と言わば言え、な感動作。麻雀漫画では、運の要素が強く理不尽が多いというゲーム性から麻雀を人生に例えることがよく行われますが、それが最もきれいに決まった作品の一つでしょう。 

長く単行本化されてなかったんですが、弊サークルで単行本化しました。まだ在庫あります。リンク先からサンプルも読めますんでよろしくっす。

根こそぎフランケン(押川雲太朗

近代麻雀オリジナル95~00年・近代麻雀00年連載(kindle

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あらすじ 

かつては無敵の勝負師だったが、勝ち過ぎたが故に周囲の恨みを買って全財産を失い、それ以来ちんけな麻雀を打って口に糊していた竹井。彼はある日、人間離れした強運と天衣無縫な性格の持ち主・フランケンに懐かれる。
折しも、かつて竹井が経営していたが、部下の裏切りによって奪われたカジノバー「レネゲ」で、超高レートの麻雀大会が開かれようとしていた。竹井は、フランケンとコンビを組んで麻雀大会に乗り込むことに……。

 

90年代後半以降の麻雀漫画界で最も重要な漫画家の一人・押川雲太朗出世作。この人の作品だと後年の『リスキーエッジ』(kindle)の方を推すという人も多いと思いますし、それはそれでよく分かる(麻雀シーンならそっちのほうが上だと思う)んですが、ここではこっちを推しときます。キャラがめちゃくちゃいい(特に、金持ちのボンボンで傍若無人&負けず嫌いなライバル雀士・ワニ蔵さんが最高)んですよ。非麻雀漫画での傑作『不死身のフジナミ』(kindle)もそうなんですが、この人の描くアクの強いメチャクチャなおっさんの大暴れ、本当に気持ちがいい。あと、最終話がとてもよい(本作、「東京カジノ編」(初期数話を除く前半)・世紀末ギャンブル黙示録編」(後半)の二部構成なんですが、どちらもよい)んですよ。

なお、本作についても麻雀漫画研究で作者インタビューをした号があります。

 

マジャン~畏村奇聞~(カミムラ晋作

エブリスタプレミアム10~14年連載(マンガ図書館Z / kindle

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あらすじ

行方不明となっている父の故郷・麻上村に引っ越してきた中学生・山里卓次。携帯も通じない山奥のその村は、「マガミサマ」と呼ばれる神を信仰する土着宗教に支配され、麻雀―この村では、「マジャン」と呼ばれ、マガミサマに捧げる神聖な儀式とされる―の結果が人間の運命を決める狂った村だった。卓次は、マジャン勝負に勝ち進みながら村の秘密に迫っていく。

 

因習の残る山村での伝奇サスペンスと麻雀が高いレベルで融合した10年代麻雀漫画を代表する傑作。携帯コミックサイトでの連載のため一般にあまり名が知られておらず、単行本が2巻で打ち止めと不遇をかこってきましたが、マンガ図書館Zでの公開で気軽に全話読めるようになってめでたい限りです。
麻雀漫画としての本作の独創的なところは特殊ルール。「マジャン」の取り決めとして、開始前に引いたくじに従って特殊ルール(例えば、「他家の牌を使用しないと和了れない(副露かロン和了のどちらかが必須)代わりに食い下がりと一部役(一盃口など)の門前縛りが存在しない」など)が追加されるというものがあり、主人公がこれらのルールをどう乗りこなしていくかが読みどころ。『バード』あたりと同様、ミステリ好きにもオススメできます。

ショーイチ(柳史一郎+神田たけ志)

近代麻雀ゴールド88~93年連載(マンガZERO / kindle

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あらすじ

「新宿の雀鬼」と呼ばれ、代打ちなど〝裏〟の麻雀勝負において20年間無敗であり続けた男・桜井章一。時に裏技で、時にヒラッコ(イカサマ無しの勝負のこと)でと、桜井が繰り広げた様々な勝負を描くドキュメント風ストーリー。

 

雀鬼」こと桜井章一については、麻雀知らんという人でも、自己啓発系の新書コーナーなんかで見た経験はあったりするんじゃないかと思います。毀誉褒貶ある……というか、俺も雀鬼様をどう思うかについて聞かれたら非常に微妙な顔になってしまうんですが、それはそれとして、本作は手放しで褒められる傑作です。特に4~5巻にかけての「治外法権麻雀」編は、オールドスタイル(あえてこう書きますが)なイカサマ勝負ものの最高峰エピソードでしょう(『凌ぎの哲』なんかも手積みイカサマものですが、あれはワザの掛け合いよりも「誰と手を組み、どこで裏切るか」みたいな大きな駆け引きの方が重点で、そのあたり古きイカサマものとはちょっと違ってると思います)。2巻の「銀座の夜の帝王」編なんかもかなり捨てがたいですね。
なお、シミケン主演で大ヒットとなったVシネマ雀鬼』シリーズの原作です。続編に『真説ショーイチ』『伝説の雀鬼』もあります。

真・麻雀伝説 風の雀吾(志村裕次+みやぞえ郁雄)

月刊漫画タウン(ガッツ麻雀)82~83年連載(kindle

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あらすじ
中国での麻雀修行から帰ってきた榊雀吾が見たものは、何者かに襲われ、虫の息の父の姿だった。謎の集団・夜叉連合が父を襲い、封印されし十二の悪魔の雀技・「雀神技」を奪っていったことを知った雀吾は、父の仇を取るため戦いに挑むが……。

 

『ナイトストーン』『トーキョーゲーム』と並んで日本三大SF麻雀漫画と言うべき怪作。電子書籍で読めるとはいい時代になったものですよほんと。
本作を伝説足らしめたのは「雀神技」の内容。イカサマとかいう次元ではなく、序盤の敵が使う技からしからして「あがれなかった手牌の残留思念を活かす」「精霊が相手の手牌や山の牌を通してくれる」といった超能力の領域であり、終盤に至っては「相手の意識を肉体から遊離させ、最終的にブラックホールへ封じ込めてしまう」「太陽のエネルギーで相手を焼き殺す」など、麻雀の粋を超えたものになっていきます。それでいて、「敵がなぜか弱いやつから順番に主人公にぶつけてくる」というこういう話のお約束を逆手に取り、全2巻できっちり話が収まるプロットは意外にも緻密だったりします。

本作については、原作者の志村にはVol.4で、作画のみやぞえにはVol.2で、担当編集の宮崎信二(後に原作者として『YELLOW』(かわぐちかいじ)など)にはVol.12でと、全員にインタビューを取ってます。志村については、インタビューの1年後である13年に64歳で亡くなられていることもあって、インタビュー全文を公開しています

同トリオによるSF麻雀漫画の姉妹作とでも言うべき、『麻雀鳳凰城』(kindle)もオススメ。

雀士ロマン 牌師(ワザシ)(山根泰昭+北野英明

劇画Aクラス麻雀89~90年連載

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あらすじ

勝ちきれない代打ち、就職かプロ雀士を目指すかで揺れる青年、麻雀で負けたがる地上げ屋……。東京で暮らす麻雀打ちたちの姿を描く1話完結のオムニバス連作。

 

麻雀プロであり原作者・編集者でもある土井泰昭(山根は90年代前半までの旧ペンネーム)。彼の最高傑作といえば『勝負師の条件』(マンガZERO / kindle)か『幻に賭けろ』(kindle)が挙げられることが多いですが、知名度が一段落ちる本作も実はいいんですよ。麻雀漫画黎明期の大家・北野英明最後の麻雀漫画連載(読切はこの後にも描いていますが)にして最高傑作でもあります。
本作各話の主人公となるのは、「常勝するプロ」とかの華々しい人間でも、キャラ立ちしたアクの強い人間でもなく、しけた麻雀打ちばかり。ただそれが、89年頃には時流から外れて華を欠いていた北野の絵と絶妙にマッチしています。なんか褒めてるように見えない気もしますが、無個性なモブ顔主人公(ちなみに、上の表紙画像にある男たちは全員別の人です)だから立つ話もあるんですよ。
ちなみに北野、60年代は虫プロで活躍(アニメ「どろろ」の作監とかやってたり)し、70年代は麻雀劇画の帝王と言ってもいいくらい活躍していたのに、90年代以降はほとんど作品発表がなくなり、現在は消息が全くわかっていません(麻雀関係者も手塚関係者も口をそろえて知らないと言う)。90年代末期に歌舞伎町の雀荘でお茶くみをしてたというところまでは麻雀関係者複数から聞いたんで確度が高いんですが、それ以降がさっぱりわからない。行方を知っているという方の情報を待っています。いっそクラウドファンディングで資金集めて興信所に頼もうかなとも思ってるんですが、人探しのノウハウをさすがにさっぱり知らないんで、その辺詳しいぜという方がいたら教えてほしい……。

それと、土井のインタビュー号もありますんでよろしくっす。

西子 或る女雀士の一生(山松ゆうきち

近代麻雀オリジナル83年連載(Renta!

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あらすじ
所詮この世は金次第。ウチは大金持ちになるんや! 幼くして母に捨てられ、貧しさと荒廃の中で生きる少女・西子。女の武器と麻雀の腕で追い求める幸福は、指先も届かぬうちにするりと逃げてゆく。西子の一生は蜃気楼のような幸福とのいたちごっこだったのだろうか? 真実の幸福に気付いた時はすでに遅く、西子の掌に残ったものは…?(裏表紙あらすじより引用)

 

 80年代麻雀漫画の名バイプレーヤー・山松ゆうきち。ギャグ・コメディ寄りの話が多い人ですが、ギャグとシームレスで救いの全く無い虚無の話が放り込まれてくるのが恐ろしいところ。本作はそんな虚無方面がまるまる一冊になったもので、一人の女雀士の荒廃した生き方が淡々と進んでいきます。なぜか妙にマイナーなプラットホームでだけ電子書籍が出ているのは謎。
ちなみに山松、近年だと、『無法者』の沢本英二郎を作画にして、「インドの雑誌で連載するための企画として生まれた、古代インドを舞台にゾウと人間との戦いを描く漫画」という、あらゆる意味で日本唯一の作品『ヴァラナシの牙』(スキマ / kindle)という傑作をやっていて、これが電書で読めるのすばらしいことなのでみなもぜひ読んでほしい。沢本、「犬が麻雀を打つ漫画」と「ゾウが人間と戦う漫画」の両方を描いてるのマジすごくないですか。

雀鬼の群れ(戸川洋祐+司敬

傑作麻雀劇画78年連載

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あらすじ

朽ちた壁の家が立ち並び、淀んで臭い川が流れ、誰もが「こんな街はいつか出ていくよ」とこぼしながらへばりついている。「陽かげりの街」と呼ばれるそんな都会の片隅で暮らす、どうしようもない麻雀打ちたちを描いた連作集。


連載時タイトルは「陽かげりの街」。単行本は84年になってからグリーンアロー出版社から出ました。原作の戸川はろくに情報なく詳細不明なんですが、00年代に入っても『ビクトリー麻雀』でひっそり書いてるあたり、荒正義あたりの別名義なんじゃないかという気もします。
内容はあらすじの通り、昭和感で煮しめたような非常に辛気臭い人情もの(麻雀漫画にはこういう「辛気臭い路線」というものが連綿とあります。近年だと『東大を出たけれど』とか。まあ麻雀打ちって世間的にろくでもない生き方だし……)です。麻雀シーンの見どころも少ない。全然褒めてませんが、でもなんか好きなんですよねえ。「人間 勝ったヤツだけがこの世の中を生きてたら大変だぜ―― お天道様が当たらねえとこだって ちゃんと花が咲かァな――」というラストのセリフなんかも本作を象徴してて、まあそんな感銘受けるようなもんでもないんですが、しみじみとしたよさがある。
人によっては本当にどうでもいい作品だろうなーとも思います。

はっぽうやぶれ(かわぐちかいじ

近代麻雀オリジナル84~87年連載(マンガZERO / kindle

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あらすじ
博多出身の麻雀打ち・花島タケオは、作家の朝倉徹也に誘われ、朝倉と、タケオとは対照的な性格の麻雀打ち・蟹江凱と共に「麻雀新撰組」を結成することに。新撰組は麻雀界に旋風を巻き起こすが、タケオと蟹江のライバル意識も強くなっていき――。

70年代前半に一世を風靡し、麻雀ブームの立役者となった麻雀タレント集団・麻雀新撰組阿佐田哲也小島武夫・古川凱章)をモデルに描いた一作。今じゃすっかりヒットメーカーのかわぐちですが、転機となったのは実は麻雀漫画。かわぐちって70年代は原作付きの作品が多く、大ヒットには恵まれてなかったんですが、これの前作、81~84年に近オリで連載してた『プロ』(マンガZERO / kindle)がオリジナル作品として注目されて講談社から声がかかり、『アクター』『沈黙の艦隊』へとつながってくという流れなんですね。野心的なことをやろうとしている感じの『プロ』と、円熟のエンタメという感じの本作、どちらも30年以上昔の作品であることを気にさせない面白さです。

かわぐちもインタビュー号があります

哭きの竜能條純一

別冊近代麻雀85~91年連載(kindle

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あらすじ

鳴くことによって手を高く仕上げるという、麻雀のセオリーを超えた打ち方をする謎の男・竜。極道たちは、人間離れした魔性の運を持つ竜という男を手に入れようとして次々と血を流していく……。

 

麻雀漫画はよく知らないという人でも本作は知っている(90年代以降の生まれだと知らない人も多いでしょうが)大ヒット作。有名な「あンた 背中が煤けてるぜ」をはじめとする数々の名台詞、独特の雰囲気ある絵、一流のハッタリは今でも輝きを失っていません。まあ麻雀漫画というよりはヤクザ漫画であるというのはありまして、なんでかと言うと本作登場人物のほとんどみんな、麻雀での竜との勝ち負けに興味があるわけではない。本作のヤクザたちって、「麻雀勝負でシマを奪い合う」みたいな眠たいことは一切言わず、ほしいもんは暴力で切り取ってますからね。その上で、人間の力では届かない何かを求めて、人間の理屈を超えた麻雀を打つ竜を手元に置きたがってるという話なんですね。
あと本作、有名さからかかえって正当な評価されてないところがあって、「能條は鳴きさえ知らないほど麻雀の知識がないのにこれを描いたので麻雀シーンは無茶苦茶」みたいな物言いがしばしば見られますが、能條は確かに麻雀詳しくはなかったものの、これ以前に『わたしは雀』という麻雀漫画を2年ほど連載してたのでポンチー知らないレベルではなかったし、麻雀シーンの原作は先述の土井泰昭です。「現実ではまずありえない」=「無茶苦茶」ではないんですよ。

牌の音(安田潤司+中村毅士)

近代麻雀ゴールド03~05年連載

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あらすじ

伝説の雀鬼桜井章一が遂に牌を握った!! そして自身の一打一打を雀鬼本人が解説!! 「自分の弱い色・強い色を踏まえた手牌の捌き方」「目に見えないリズムや流れのさらに奥にある拍子を外す打ち筋」「前局までのアヤで決まる字牌の切り順」等、「無敗」ゆえの感性で語られる、圧倒的な説得力に満ちた言葉の数々!! 全ては偶然ではなく必然でつながっている!! 「物事の連続性」の意味と、「20年間無敗」の理由がここに濃縮!! 実戦!! 実録!! の決定版!!(2巻裏表紙より引用)

 

かつて、『近代麻雀ゴールド』という雑誌がありました。05年まで存在したこの雑誌、戦術の『ショーイチ』とその続編が長く柱だったこともあり、末期は「雀鬼会の同人誌」と言われてたほどに雀鬼会がらみの漫画ばっかり載っていたのですが、その中でも屈指の問題作がこれ。90年代なかば以降の雀鬼会、正直に言ってカルト宗教感があり(本作のあらすじ見ても正直キマってしまってる感じがありますが)、その日常風景を描く本作は「俺はこれを読んでどういう顔をすればいいんだ……」という気持ちになれます。いやー、麻雀打ってる話だけならまだいいんですけど、雀鬼様が中邑真輔に格闘の指導をする話とか、どうすればいいんだ。
また作画の中村毅士の絵が独特で、目が死んでる雀鬼様のバックに少女漫画みたいなファンシーな効果が舞ってるコマとか見ててひたすら不安になるんですが、呼んでるうちにだんだんクセになっていきます。他の麻雀漫画にはない読書体験。

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ちなみに、原作者であり作中の狂言回しでもある安田は、『ゴッドハンド輝』に出てきた安田院長のモデルの人。当時の雀鬼会の重要人物であり、雀鬼系の麻雀漫画の原作や闘牌原作に多く関わってましたが、今では雀鬼会を離れているそうです。コンビニコミック版全2巻が唯一の単行本なんで、読みたい人はブックオフのコンビニ版コーナーとかを地道に漁ってください。

ジャンロック(高橋のぼる

近代麻雀02年連載

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あらすじ
リーゼントに革ジャン、バイクというロックな出で立ちの男、麻田雀平。彼には、最強の雀士を養成する麻雀の秘密地下組織・龍(ドラ)の穴を脱走してきたという過去があった。しかし龍の穴のミスターZは雀平の裏切りを許さず、3人の刺客「龍待チックエンジェル」を差し向ける。ロックのリズムに合わせて踊ることにより脳の松果体から大量のセロトニンを分泌し、奇跡のツモを呼びこむという必殺技「マージャンズ・ハイ」を武器に戦う雀平の運命やいかに……。

 

麻雀漫画ファンから単行本化を強く渇望されながらいまだ単行本になっていない(「下品すぎる」として作者が嫌がってるらしい、というウワサあり)幻の超怪作。
ロックのリズムに合わせて踊ると強くなるという主人公も大概ですが、対戦相手も「自分の体を拘束しつつ、背中に熱いロウを垂らすマシーンを背負いながら麻雀を打つ(口を使ってツモり、舌で盲牌する)。M的快楽を感じるほどにツモが良くなるというMの中のM女」みたいな無茶苦茶なやつばかり。
何より本作を伝説足らしめたのは最終回で、龍の穴とのラストバトル、3対1という不利な状況の中で751億9339万点という大差(注・青天井ルール)をつけられてしまった雀平、マージャンズ・ハイを発動させて逆転のオーラを漂わせるも、不穏な空気を察した龍の穴側に首を刎ねるという直接行動に出られてしまい、あっさりと死亡! が、

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「あーーーーッ!! あーーーーッ!! 首が無ぇのにツモってるーーーー!!」と、死んだことをものともせずにツモり、手牌を倒す雀平。すると14牌全部が東!(局の開始時に一人4枚まで好きな牌を卓に入れられるという特殊ルールでの対戦で、全員が東を4枚入れていたという状況だったのでルール違反ではない) リーチ一発ツモ・字一色・東一色・四暗刻・ドラ28(ドラは表裏共に東)、点数はなんと、

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1杼1333垓6795京5888兆7148億5128万7100点! さらっと言ってるけど東一色って何だ! 
点数自体は後に『ムダヅモ無き改革』に抜かれましたが、衝撃は抜かれていない。 

花引き ヴォルガ竹之丞伝(小池一夫+ふんわり)

近代麻雀04~05年連載

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あらすじ
「えいこーら えいこーらッ」と「ヴォルガの舟歌」を歌いながら驚異的な引きを見せることで「花引き」と呼ばれる強運の持ち主・ヴォルガ竹之丞と、その恋人であり、ロシアのヴォルガ・トレニロブカ研究所から逃げてきた、「史上最高の上げマン」であるエペ。この二人が新宿へやって来た。
ヴォルガ・トレニロブカ研究所所長のカシュノフ博士は、竹之丞の手からエペを取り返すため、「鬼引き」と呼ばれる伝説の麻雀打ち・昭和礼二郎を刺客に送り込む。
竹之丞と礼二郎が打っていたところ、礼二郎は実は本物の鬼引きではなかったことが明らかになり、折れた刀が飛んできたのを飲み込んで死んだ。
それで、実は自分が本物の鬼引きだと名乗るカシュノフ博士と麻雀を打っていたら、礼二郎が実は生きてて、あと実は礼二郎がやっぱり本物の鬼引きだった。
そしたら、負のツキを大きくするために性転換した竹之丞の兄であるベラヤ・ラヒーモフ・杉江という女が出てきて、杉江・礼二郎コンビと竹之丞・エペの戦いになった。
竹之丞がこれに勝ったと思ったら、礼二郎を杉江が射殺して、今度は杉江と、床の上に転がってる麻雀牌を目隠ししたまま拾って手を作るという戦いになり、竹之丞がまた勝った。
そしたら杉江が竹之丞とセックスすることを許可したので、やったら杉江が急激に老いて死んだ。第一部完(この後、第二部もあります)。


この作品を読んだことがある人なら、上記のあらすじは、俺の気が狂ったのではなく、非常に的確に第一部をなぞったものだと分かることでしょう……。自分正気だぞ。書いてて、自分でも電光石火供えガイのあらすじでも書いてるような気分にはなりましたが……。内容についてこれ以上説明する気はない……というか説明不能としか言いようがない麻雀漫画史上最も難解な漫画の一つですが、折に触れて人と本作について話したくなる、そういう魅力があるんだ。
単行本が1巻しか出てないので、第一部の後半(あらすじで言うとベラヤ・ラヒーモフ・杉江登場以降)と第二部が国会図書館行く以外に読めないのが難点。完全版出してくれ! いや、ふんわり(現・小幡文生)にとっては思い出したくない、出したくない作品なのではないかという気もしますが……。

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以上です。

 

最後に宣伝を付け加えておきますと、8/12の夏コミ3日目、東ナ10a「フライング東上」で出ます。"竹書房に「麻雀漫画をやるべき」と進言した男"梶川良氏へのインタビューを中心とした新刊『麻雀漫画研究Vol.20』のほか、上の文章の中でもちょいちょい宣伝した既刊1-19や『3/4それから……』『プラム!』といった復刊本も置いています。また、麻雀漫画関係ないですが『男!日本海』の単行本未収録シリーズ「謎街道をゆく」編の本や、アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作小説本(うづりん・ゆいちなといった百合のほか、SF、五言絶句などが入っています)、咲-Saki-キャラが教えてくれる中国麻雀ルール本などといったものも出してます。よろしくね(とりとめのないサークルだ)。

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